映画『シスターフッド』レビュー

どうも、阿久津(@kidney0202)です。

新年最初の投稿ですね。今年は小説家としての活動に注力したいため編集業は全て打ち切り、ライター、小説、詩に力を入れております。その関係上まとまった時間を確保できる機会も増えるので、もう少しブログも頑張れたらいいですね。

今日は映画の話です。年明けも遅ればせながら『ボヘミアン・ラプソディ』を観たり、『グリーンブック』を観たり、本もぼちぼち読んだりと、適度に芸術に触れています。その中で、本日はタイトルの通り『シスターフッド』という映画のレビューをしましょう。

この作品は2019年の3月1日にアップリンク渋谷(東京都渋谷区宇田川町37-18トツネビル2F)にて公開が開始された作品ですが、「第14回大阪アジアン映画祭」でインディフォーラム部門に出品されたことで、3月9日(土)と13日(水)にシネ・リーブル梅田でも上映される運びとなりました。

このお陰で、京都に住んでいる我々夫婦も東京まで足を伸ばさずに、この映画を観られるようになりました。実は僕自身この映画の存在を全く知らなかったのですが、妻がどうしても観たいと言うので、急遽付いていくことになりました。

その妻のメインの目的も、実は映画ではなく後述する主演女優兎丸愛美(‪@usamarumanami)さんだったのですが、そのことが今回レビューを書くに至った動機にも直結します。

映画を沢山の人に知ってもらう→公開される映画館が増える→役者さんも注目される→仕事が増える→皆ハッピー、という方程式が成立しますよね。同時に、味方の味方は味方、みたいな方程式も。そんなわけで、サボりまくりの弱小ブログではありますが、微力でも応援になればと思い今回筆を取らせていただきました。

繰り返しになりますが、3月13日(水)にもシネ・リーブル梅田で上映されますよ。その後4月13日(土)からは横浜シネマリン(横浜市中区長者町6-95)でも公開が開始されます。

あらすじ

東京で暮らす私たち。

ドキュメンタリー映画監督の池田(岩瀬亮)は、フェミニズムに関するドキュメンタリーの公開に向け、取材を受ける日々を送っている。池田はある日、パートナーのユカ(秋月三佳)に、体調の悪い母親の介護をするため、彼女が暮らすカナダに移住すると告げられる。

ヌードモデルの兎丸(兎丸愛美)は、淳太(戸塚純貴)との関係について悩んでいる友人の大学生・美帆(遠藤新菜)に誘われて、池田の資料映像用のインタビュー取材に応じ、自らの家庭環境やヌードモデルになった経緯を率直に答えていく。

独立レーベルで活動を続けている歌手のBOMI(BOMI)がインタビューで語る、“幸せとは”に触発される池田。

それぞれの人間関係が交錯しながら、人生の大切な決断を下していく。

出展:映画『シスターフッド』公式サイトより

ドキュメンタリーと劇の境界線

この作品は元々2015年に「東京に暮らす女性たちの生き方を描く」というコンセプトのもと、ドキュメンタリー映画部分の撮影が開始されました。その後2017年に「#MeToo」運動が広まったことなどの影響を受け、劇映画要素を含んだ部分が追加で撮影されています。

作中ではドキュメンタリーやジャーナリズムの定義的な面についても語られるシーンがあり、異なる表現手段の境界を超えることを一つのポイントとして据えているように思います。

余談ですが、本作の制作に際してはクラウドファンディングが行われ、およそ220万円の資金が集まりました。表現したいことがあっても現実問題という壁に阻まれるケースは少なくありません。特に芸術的分野においては。クラウドファンディングがそういう壁を打ち壊す一手として、今後も沢山の表現者に利用されるといいですね。

監督の西原孝至氏(‪@tk_ns)は近年ドキュメンタリー系の作品を多く撮影されており、学生団体「SEALDs」の活動を追った『わたしの自由について』がカナダの国際映画祭、HotDocsに正式出品、毎日映画コンクールドキュメンタリー部門にノミネートなど、このジャンルにおいて確かな実力を有しています。

前述した通り、本作『シスターフッド』もドキュメンタリー要素を多分に孕んでいるわけですが、その中で重要なテーマとして「フェミニズム」や「女性の生き辛さ」といったものが取り上げられます。

主演にはヌードモデルの兎丸愛美さんと、歌手のBOMIさんが起用されており、それぞれ作中では本人役として登場します。二人の生き方を軸に上記のテーマの他「幸せ」や「尊厳」といった内容が扱われています。撮影の舞台は一貫して東京であり、これは西原監督が東京に対して抱いている、世界有数の都市でありながら若者にとって生き辛い地でもある、ということに起因しているとか。

『シスターフッド』レビュー

まず、本作は全編色のないモノクロ作品なのですが、それが上手く作用しているように思えました。彩や華に溢れた東京という都会がどこか寂しげで、センシティブな題材も相まって引き込まれました。男性や女性が持つ色の雰囲気や情報というものを遮断する効果も、意図しているかどうかは別に演出され、メッセージに即した世界観だったなと。

男性目線ではありますが、「女性の生き辛さ」「自分の幸せ」ということを過去に考え抜いた経験のある自分としては、懐かしさや面映ゆい気持ちも覚える内容でもあるのですが、作品の伝えたいことが明確なので、観ていてストレスはありません。若い女性に支持を受けそうな内容ではありますが、老若男女を問わず、自身の中で咀嚼する価値のあるテーマです。

一方で、ドキュメンタリー部分に劇映画部分が押されている印象も受けました。撮影に費やした期間が違うので仕方がないといえばそれまでですが、脚本(物語)としてはもう少し起伏があっても良かったのではないでしょうか。センセーショナリズムにし過ぎることで過剰に思想的な映画になってしまう恐れもあるので、ギャンブルなのかもしれませんけど。

「観たい人、このテーマに悩んでいる人、真剣に向き合っている人には分かる」という高尚さと、柔和さがマッチしているのが、長所でもあり短所でもあると感じました。

もう少し上映時間が長くなってもいいから、ドキュメンタリー部分を伸ばして演者の発言に厚みを持たせるか、それを上手に劇映画部分に盛り込めたらもっと受け入れやすかったかもしれません。

ただ、ドキュメンタリー×劇という試み自体が簡単なものではありませんし、実験的な意味で批評させていただくなら、非常に興味深い一作でした。二つのテリトリーの境界を超えていくという目的は大いに成功していたと思いますし、芸術作品としての映画に一石を投じるモノでした。ドキュメンタリーでも劇でも、そして映画でもないメッセージとでもいうのでしょうかね。

僕はもちろんのこと、妻も人としての生き方に悩んだことはあっても、女性としての生き辛さに苦しんだ経験がないのですが、だからこそ世の中に生じている男女の溝、若者と高齢者の溝のようなものを垣間見ることができました。狭まっていた視野を広げ、知らないことを考えさせられるという、映画の力を感じます。

女性から見た男尊女卑やフェミニズムということだけではなく、男性的な視点から捉えたこのテーマというのも面白そうですね。こういったテーマに対して日本人は疎い傾向にあると言ったら角が立つかもしれませんが、仕事でも権利でもプライベートでも、もっと対話しなければいけない気がします。

百年前は女性の参政権がなかったり社会的立場が今以上に弱かったり、今よりも更に悲惨な格差や差別がまかり通っていました。その時代からは亀の歩み程度でも進歩しているわけですが、まだまだ及第点とは言い難いでしょう。

兎丸愛美さんという女性

冒頭にも述べた通り、今回我々(主に妻)は映画ではなく、主演の兎丸愛美さん目当てで劇場に足を運びました。作品上映後には西原監督と兎丸さんの登壇、パンフレット購入者へのサイン会も催され、大満足の内容となりました。

僕個人としては兎丸さんのことは、結婚後に妻から聞くまで存じ上げませんでした。日本では数少ないヌードモデルとしてご活躍されている女性で、女優やモデルとしての活動もされています。同い年で誕生日も11日違いなんて、勝手に親近感ですね。

2017年4月に発売された写真集『きっとぜんぶ大丈夫になる』を妻に頼まれてヨドバシドットコムでポチったのが、ちゃんと彼女の作品を目にしたタイミングでした。

妻は兎丸さんのことを随分昔から慕っていた––慕っていていたなんていう言葉では言い表せないくらい好いていたのですが、様々な不運に阻まれて今まで中々ご本人にお会いすることが叶いませんでした。主に僕の持病の悪化による体調不良とか、体調不良とか、体調不良とか。『きっとぜんぶ大丈夫になる』の個展が大阪で開かれた際も、僕の腸閉塞で足を運べず、苦い思いをさせてしまいました。

それが今回ようやくご本人にお会いできるということで、張り切って前日に手紙を書き、当日はしっかり化粧を決めて、迷子でバッチリ何分か遅刻して劇場に滑り込みました。上映後のサイン会も緊張で全然列に並べず相当焦っていましたが、意を決して列に並ぶ妻。見守る僕。色々話しましたが、列から離れるときは「泣いてもいいんだからな」と一言告げて離脱しました。

やがて順番が訪れ、何やら話している様子。そして案の定泣く妻。だけどちゃんと手紙も渡せたし、一緒に写真も撮ってもらえていました。

※兎丸さん、監督の順で握手をした後「もう一回(兎丸さんと握手)しておけば?」と言って二回握手をさせてくれ、写真撮影の際にカメラマンもしてくれた西原監督、本当にありがとうございました。

妻は「兎丸さんと会うと泣いてしまう女の子は多くて、私も『彼女の前で泣いた女の子の一人』になってしまったのかな」と寂しげに言いました。ですがその夜、兎丸さんがツイキャスをしまして、その中で彼女は手紙が嬉しかったこと、その人たちのことをちゃんと覚えている(思い出す)と語っていました。

その言葉は妻を「ファンの一人」ではなく、「一人の人間」としてすくい上げてくれるもので、かけがえのないものでした。兎丸さんは19歳の頃に死のうと思って遺影を撮影したのがヌードモデルとして活動するきっかけだったそうですが、ツイキャスを妻の横で聞いたとき、兎丸さんに対して「生まれてくれて(そのときに死なないでくれて)ありがとう」と思いました。

自分語りになると、僕はライターとしてはアンチが多少いるので、小説を書く際は別のペンネームで活動しているような小心者です。「ライターとして嫌いだから、芸術作品としてもこいつが作るものは問答無用に嫌い」と思われたくないからというのが大きいのだと思います。

でも、兎丸さんは兎丸愛美として、逃げも隠れもせず自分を表現して、それで自分の幸せを少しずつでも勝ち取りながら、人も幸せにしているんだなぁ、と思ったのです。そう考えると、強い人––強くなった人なのだな、などと考えさせられました。僕みたいな無名ライターより、よほどアンチも多くて攻撃されそうな職なのに。

多様性を認めることや受け入れてもらうことは簡単ではないし、何かを表現するということは誰かに否定されるということでもあると思います。その中でも大切なのは、誰かに認められることではなく自分が自分を愛してあげるということなのだと、妻も僕も兎丸さんから学んだ気がします。ありがとうございました。

映画『シスターフッド』公式サイト

https://sisterhood.tokyo/

『シスターフッド』公式twitter

https://twitter.com/sisterhood_film

大阪アジアン映画祭公式サイト

http://www.oaff.jp/2019/ja/index.html

西原 孝至監督twitter

https://twitter.com/tk_ns

主演:兎丸愛美さんtwitter/Instagram

https://twitter.com/usamarumanami

https://www.instagram.com/usamaru_manami/?hl=ja

主演:BOMIさん公式サイト

http://bomibomi.com/

各々、よしなに